「徳島大学 i.school の設立に寄せて」
この度、徳島大学 i.school の設立に寄せて、一言ご挨拶申し上げます。
今回スタートします「徳島大学i.school」においては、「徳島」から日本や世界を変えるイノベーションを実現することを目指し、イノベーション創出プロセスを設計、実施できる人材を育成いただきます。
現在日本では、目指すべき未来社会の姿として、「Society5.0」が提唱されています。これは、Society 1.0の狩猟から、農工、工業、情報につぐ、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会」と説明されます。このように、Society 1.0から現在の5.0に至るまで、その都度イノベーションがありました。イノベーションは良く、「技術革新」と訳されますが、実は単に目に見える何か特定の技術が新たに勃興して革新が起こることだけを意味するのではなく、それに関わる人々の考え方の革新も含む概念です。
さて、皆さんは、「i.school」のように、英単語の前に小文字のアルファベットが付加されることで新しい概念やものを表す表現がいつから一般化されたと思われますでしょうか。定かではありませんが私の意識するところでは、1998年5月6日に発表され、世界に衝撃を持って迎えられた小型のデスクトップパソコンiMacの登場ではなかったかと思います。すでに四半世紀近くも前のことで、受講生の皆さんの多くはまだ生まれておられなかった頃かと思います。「ボンダイ・ブルー」と称した半透明の特徴あるシックな緑色で、かつ丸っこい愛嬌のある形状の、それまで全くなかった秀逸なデザインのパソコンでした。全世界にあっという間に普及したことはもちろんです。ここでいう「i」は、当時普及し始めたInternet が誰でも簡単に使えるようにとの思いが込められていたとのことです。一方、「i.school」の「i」は何でしょうか。多分inovationの「i」で間違いのないところでしょう。受講者の皆さんには、ぜひこのプログラムをしっかり学ばれ、本学のイノベーションリーダーシップ人材として成長されますようお祈りします。そして、私は「河村」ですが、来る暁には例えば「i.Kawamura」などとそれぞれなっていただけますよう、皆さんの頑張りに大いに期待します。
先のデスクトップPC iMacを世に送り出したApple社創業者の一人、Steve Jobsはゲストとして招かれたシリコンバレイにあるStanford大学で、2005年6月12日に感動的な卒業式の祝辞を述べています。機会がありましたらぜひ皆さんもYouTubeでご覧になってください。まだご覧になったことのない皆さんには、ネタバレになってしまいますので詳しくは述べませんが、彼は挨拶の結びに次のように述べています。「Stay hungry, stay foolish」。今回のi.schoolをはじめとして、受講生の皆さんの大学生活と人生を通じて「Stay hungry, stay foolish」に貴重な学びの機会を活かされ、点と点が繋がり皆さんの人生が豊かで幸いなものとなりますよう、重ねて皆さんにエールを送らせていただきます。
今回、i.school発足のために尽力下さいました北岡先生、玉有先生、片山先生、金井先生、小出さんやBLUE合同会社の石原代表さまや支援してくださる皆さまをはじめとしますi.school推進チームの皆さま、東京大学名誉教授の堀井秀之i.schoolエグゼクティブディレクターさまならびに立教大学特任教授の宮越浩子i.schoolプロジェクト・マネージャーさまには徳島大学を代表して厚く御礼申し上げます。
令和4年 4月29日
徳島大学長 河村 保彦